イヌペン 第2話(小説版原作作成日:1999年頃)
原題
サボン
つのはえたボール
なおしかた
おんどれ
サボンが捕まっていた!
ねろ!
名はサボン。好きな食べ物はアロエ。
ある日、彼はあることに気が付きました。それはサボンは家族以外と体で触れ合ったことが今までに一度も無いことです。サボンが思うには、原因は自分の体に無造作に生えている鋭い体毛だと考え、今まで誰に対しても握手を断られたことというのも納得できます。この事実をサボンは脳天気なイヌペンに打ち明けようとしました。一番親密に接しているイヌペンなら、この悩みの良きアドバイスを語ってくれるだろうとサボンは思い込んでいました。
早速サボンはイヌペンの家へ向かって、とことこと歩って行きました。そろそろイヌペンの家が確認できる範囲までやってきました。イヌペンが窓の片隅に隠れ、疑わしい眼差しでじーっと凝視しています。サボンはこんな状況でも躊躇せずに、あのさ〜と気楽にイヌペンに話しかけました。イヌペンは何のこっちゃと思って、一気に雨戸を引き始めました。サボンが「ちょっと相談……」と言いかけているのに対して、イヌペンはサボンと話しているぐらいなら他の用事を優先しようと考えていました。サボンは無口な雨戸を目の前にして、微量にアドレナリンを分泌させてしまいました。
「おい。イヌペン。あけれ!」
ドスの効いた声になってしまいました。イヌペンはこの重低音に反応して、10センチメートルほど雨戸を開けてやりました。サボンはそのときイヌペンの表情を目撃したのですが、ありえないほどすわっていました。しかしそんな表情は瞬く間ににこやかな顔へと変化しました。
「そーだん? ……何の?」
この質問を聞いてサボンは待っていましたと言わんばかりに、つくり困り顔をしました。そして小声で、「オレって……痛い?」と問いかけました。イヌペンはこの質問に関しては返答しがたい立場にありました。
「痛いって何が?」
「この、オレの体毛」
「あ、あー……痛いよ」
サボンは改めてこのような質問をした理由を話しました。
「オレ……今の今まで家族以外と握手とかの触れ合いがないことを、今日初めて気付いたんだ。こんなオレだって家族以外のひとと握手とかしてぇよ」
イヌペンは久しぶりに深刻になっているサボンを見てちょっぴり同情してしまいました。サボンがこんなに家族以外のひとと握手したがるなんて、そんなに家族と握手をしまくっていたんだなと考えました。イヌペンはかわいい小振りの片手だけを、黙って窓の外側へと放り出しました。その手は震えながらもやってやるぞという意気込みさえ感じ取れました。サボンはその様子をイヌペンの一大決心と受け止め、感情的に心へ響き男泣きしました。しかしサボンは思わずイヌペンの様子について語ってしまいました。
「イヌペン……お前、手みじけーな。かわいそーっ」
イヌペンはもちろんこの暴言を耳にしていて、蒼白してしまいました。イヌペンはさっきまでサボンの事を同情していたことを後悔し、同時に苛立ちがこみ上げてきました。
「ライビンと握手しやがれっ」
「えっ!!」
サボンは鈍感でした。この世の中には言っていい事と悪い事があります。サボンはこの掟を破っちゃいました。なのでそれなりの制裁は享受しなければなりません。イヌペンはサボンを誅戮するような詩を大声でうたいました。
題/いぢめっこ 作詞/イヌペン
サーボーンはー
嫌みをゆうー
※嫌みいや〜っ 嫌みいや〜っ
サーボーンーはー
いぢわーるだー
※※いぢめっこー いぢめっこー
※くりかえし
※※くりかえし
イヌペンは歌い終わった後も、サボンが何か喋るまでずうっと軽蔑の眼差しをしていました。サボンはさきほど吐いた暴言のことを反省しました。
「ごめん。んなこと言わずに握手しようよー、なっ!?」
イヌペンもサボンの生半可な反省で許してやりました。イヌペンは再度、窓から片手だけを外へ出しました。サボンは片足をあげて握手しようとしました。サボンははじめての他人との握手なのでドキドキものでした。そして二人は握手を交わすことに成功しました。サボンは嬉しい絶頂に達しました。しかし、サボンと握手を交わしたことによってイヌペンの身に異変が起こったのです。サボンは恍惚の表情を浮かべるイヌペンを見て、少し焦ってしまいました。
「どーしたイヌペン!!」
「あ……き・も・ちハー」
イヌペンはサボンと握手して悔いはなかったようです。そして、サボンは目的を果たしたので、さっさとイヌペンの敷地から去っていきました。
サボンが去ってから、今日は天気が良いので、イヌペンは散歩することにしました。緑が鬱蒼と生い茂る小路をイヌペンは散策しています。イヌペンは、サボンと握手した件のことを独り言風に囁いていました。
「だけど以外だったなあー……あんなに気持ち良かったなんて思ってなかったっすよー」
しばらく歩いていると、イヌペンの目の前からサッカーボールが軽快な音を出しながら、弾み転がってきました。イヌペンはどうせすぐに誰か拾いに来るから別に気にしませんでしたが、しばらく経ってもいっこうに来ないので不思議に思いました。イヌペンはサッカーボールに今まで生きてきた中でも触ったことが無いので、好奇心のあまりついつい触ってしまいました。イヌペンはサッカーボールに触った瞬問激しい刺痛を感じました。その痛さのあまり、反射的にボールから跳び避けました。しかし、すぐにその痛みは緩和し、副作用の催しはまったくありませんでした。
イヌペンはこのボールをなぜか不審に思いました。じーっと見つめていると急にボールは、しゅ〜と空気が抜けて皮だけになってしまいました。イヌペンは呆然と立ち尽くしていました。そこにようやく、このボールの持ち主であろう人物がやってきました。その人物は以前みた豆っぽい人によく似ていましたが、性格はまったくと言っていいほど似ていませんでした。豆っぽい人はどうやらさきほど転がってきたサッカーボールを探している様子で、イヌペンに見覚えがあったかどうだか確か目に来たようです。しかし、イヌペンは裏声で「ないよ!?」と疑わしい答え方をしてしまいました。更に、イヌペンは動揺していて「……見つかったらやばい!」と、小声で言うはずが普通に喋ってしまい、豆っぽい人が「何が?」と、さり気無く訊いてきたのでイヌペンはやるせない気持ちでいっぱいでした。
こんな切羽詰った時に「ヤツ」がやってきました。目つきは垂れ目で、他人にストレスを与えないように優しく、優雅に豆っぽい人とすれ違いイヌペンを軽々と抱きかかえました。
「何しやがる!」
イヌペンは他人に軽々と抱きかかえられるのが大変屈辱らしく、激しく反抗して「ヤツ」から離れようとします。しかし「ヤツ」は、そのままイヌペンを抱えたまま豆っぽい人から離れました。豆っぽい人はイヌペンに用事があるのに、連れていかれたらその用事が果たせなくなってしまいます。イヌペンは必死にサッカーボールを体に隠していたのに、「ヤツ」に連れ去られたことによって無駄な努力になってしてしまったことをが苛立ちました。
「あった、あった!」
豆っぽい人のひょうきんな声が聞こえました。イヌペンはこの時、あのつぶれたボールを見てなんで喜んでいるのか理解不能でした。豆っぽい人はいつの間にか同じサッカーボールを持っているではありませんか。そしてイヌペンに感謝の言葉を述べました。イヌペンは頭の中がなぜかサボンのことでいっぱいで、ますます現在の状況判断ができなくなってしまいました。イヌペンは「ヤツ」の手の内から身を振りほどき、ふらふらとどこか彼方へと消えていきました。
サボンの家――
午後一時頃、サボンは何かの気配を感じ取って窓越しから外を伺うような行動をし、率直に言えばイヌペンと同じことをしました。その視線の先には、ふらふらとこちらへと近づいてくるイヌペンの姿がありました。イヌペンはサボンが自分と同じ行動をしていることに気付き、「オレの真似はするな!」と注意しました。サボンは案外素直に聞き入れました。サポンは窓をがらっと開け、イヌペンに何しに来たんだと軽い感じで訊ねました。するとイヌペンはあごを引いて、「お前さあ……『とげ付ボール』って知ってる!?」と暗い顔をして言いました。サボンはいかにも焦った口調で答えました。
「ま、まさか……『とげボ〜』に触っちまったのか?」
イヌペンは急に気楽な感じになって、「その通り」と返答しました。同時に、その「とげ付ボール」の名称を「とげボ〜」ということを知りました。サボンは引き続き質問をします。
「その『とげ』に触れちまったのか?」
イヌペンはこの質問に胸騒ぎを覚えました。しかし片方の脳がそう思っていても、もう片方の脳がめっちゃ気楽で脳天気なので変に混乱したのです。しかしながら、まだ正常な脳のほうが勢力が強く、最後の返答をすることができました。
「ねえ……サッ、サポン……さされれっと……ど……ど、どーなんんのさ……っ……」
「いちタスいちは?」
サボンは即答しました。イヌペンは当たり前じゃんと言わんばかりに胸を張り、腕を腰に当て中位の音量で言いました。
「じゅ〜いち。に、決まってるじゃん!」
「じゃあ、オレの名前は?!」
サボンは諦めていました。なぜならもうイヌペンは、ある病気にかかっていたからです。
「ライビン」
サボンは、イヌペンにビシッと脚で指し、語りました。
「つまりっ! 時間が経つに連れて、記憶がドンドン薄れてくっつーことだ!!」
イヌペンはこの言葉にだけは素直に反応し、ひどく顔が蒼くなり、同時に口が大きく開いてしまいました。イヌペンは半泣きで言いました。
「どしたら治んの?」
すると、サボンはオレの顔に注目しろよーと目で訴えかけ、ある行動をとりました。鼻の穴を大きく開き、勢いよく息を噴き出しました。同時に、目を垂れ目にして優しそうな雰囲気を醸し出しました。このようにしてサボンはイヌペンに手本を施し、イヌペンにこの行動をやるように仕向けました。イヌペンはこんな恥ずかしいことをやるのは少々嫌でしたが、やってみると意外にも気に入ってしまいました。実をいうと、この行動をとってもイヌペンの病気は治りません。ではなぜサボンはイヌペンにこの行動を仕向けたかというと、ただ単に己の快楽だけを独り占めに満喫したかっただけなのです。サボンが急に後ろを向いて体を小刻みに震わせているのを見て、イヌペンは不思議に思いました。
サボンはやっと落ち着いて、「ごめん。間違いだわ」と言ってまた違う快楽を満喫を味わおうとします。イヌペンは本気で病気を治したい一心なので、サボンが陰でこそこそ笑っている行動なんかまったく気に止めていませんでした。サボンの快楽時間は一時間もわたって続きました。
午後二時三十四分頃――
サボンはそろそろ本当の治し方を教えてあげようと思いました。
「じゃあ、最後の手段だ。また『とげボ〜』の角に刺されてみろ」
「うし。やったる!」
ちょうどいい時にまたあのサッカーボールがどこからともなく、イヌペンめがけて転がってきました。サボンは念を押すかのように「イヌペン」と声をかけました。それに気付くと、イヌペンはピースサインをして、分かっていると力強い口調で答えました。しかし本当の治し方の手順でなく、その前にやったサボンの娯楽手順を実行してしまいました。
イヌペンがもたもたしているうちに、豆っぽい人に似ている人が幼稚っぽい喋り方で、「あのー、早く投げてくらさーい」と言ってきました。サボンは、イヌペンの耳元で本当の手順を再度助言しました。イヌペンはそれを聞き、勇気を振り絞って手を震わせながらそおっと「とげボ〜」に触れました。その瞬間、「とげボ〜」は本性を新たにし、サボンは「とげボ〜」となぜか目が合いました。しかし、サボンは気分的に気が立っていたものなので口を固く結んでにらみ返しました。
豆っぽい人に似ている人は、じれったくなって怒りながらイヌペンの所へ近づいてきて、ひょいっとイヌペンの手の中からボールを奪い取りました。そして、きらびやかな汗を残してどこか彼方へと去って行きました。サボンは俺のおかげであいつは居なくなったのかなと、心の中ですこし自分を誉めていました。ふとイヌペンを見てみると、コンパクトに丸まっているイヌペンが居ました。サボンはなんかおかしいなと思い、考察した後イヌペンに「どぉー
した? イヌペン」と心配げに語りかけました。するとイヌペンは少し間をおいて、重い口を開きました。
「あぁ?!」
「!!」
イヌペンはいきなり泣き顔になって泣きじゃくりました。と思ったら急に泣き終わって、腹を抱えて笑いまくりました。このようにイヌペンは突如に壊れてしまいました。サボンはイヌペンの感情の変化についていけなくなり、とうとう困り果ててしまいました。するとそこに、ライビンがひょっこりやってきました。多分イヌペンとお茶をする予定で来たのでしょう。ライビンはこの様子を静かに観察して、結論を下しました。
「これは……その副作用だな」
「んじゃあ、記憶は回復したけど『喜怒哀楽』が激しくなってしまう副作用があったっていうこと?」
ライビンはそうだと言わんばかりに真面目な表情でうなずきました。サボンは本当の治し方だとてっきり思い込んでいた方法が、少し欠点があったとなると焦りが込み上げてきました。
「んじゃどーすればこの副作用は治んだよ!!」
ライビンはこの質問の答えを考えに考えました。
「……がんば!」
ライビンにもわかりませんでした。そしてライビンは「オレ……何しにここに来たんだっけ?」と思いながら、自宅へと足早に帰って行きました。サボンには絶望感が漂いました。
「がんば! ってあんた……」
サボンはこのまま固まってしまいました。それと同時に、イヌペンが我に返りました。イヌペンはサボンの変な状態を見て少し珍しく思いました。そしてなめるようにじっくり観察した後、サボンがいきなり息を吹き返しました。何やらキレている様子で、背中を反り返しヘッドバッドのような素振りをしながら、意味不明な言葉を放ちました。
「れ!! こんちくしょ!!」
サボンはライピンが居たのかと、てっきり思い込んでいたみたいです。サボンはやたら寒い空気の中、目をぱちぱちさせて、まわりをきょろりと見回しました。
「ライビンが居ない!?」
やっとサボンはテンションが元に戻りました。一人ぽつんと突っ立っているイヌペンを見て、
「あれ? ライビンは? そんでもって、なんであんた治ってんの?」
「いや、僕に訊かれてもわかんないって」
ハテナマークがサボンの頭の中でタコ踊りをしていました。イヌペンはこの様子を見て、よくある現場のアナウンサーっぽくなりきってみました。
「え〜、こちら道端で意味不明な言葉を言っている、頭の中が変なサボテンを発見しました。早速、ライビンさんが居たら訊いてみましょう。ライビンさーん、ライビンさー……あ? なんであんたが居んの?」
イヌペンが見たものは、なんかどっかで見覚えのある人物でした。そう、目がくっついてて垂れ目で、率直に言えばボケッ面をした猫です。しかし、その猫は「は?」と耳が遠い老人のような返答をして、前方へスライドしながら去っていきました。イヌペンはこの謎の空気を押し退け、気を取り直してライビンにインタビューしました。
ライビンは深刻な顔つきでこう言いました。
「恐らくこれは……アホっけ病だな。まっ、ほっとけば治るし……」
こうしてインタビューは明るく幕を閉じました。そして一ヶ月後……。
イヌペンはサボンの見舞いにと、サボンの自宅の前まで来ていました。そして誰にも気配を悟られていないことを確認し、不法侵入を図りました。しかしイヌペンの読みとは裏腹に、窓のカーテンのスリットから怪しい目がぎらぎらと光っていたことをイヌペンは知るよしもありませんでした。
イヌペンはドアをガチャリと開けると、眼前には虚しいリビングが広がっていました。イヌペンはこれに動じず、腹に力を入れて「サボーン、留守う〜? ねーってばー。サボーン!!?」と言いました。すると二階の方から何やら怪しげな物音が聞こえてきました。イヌペンは好奇心に襲われて、すぐさま二階へと駆け込んでいきました。イヌペンは何かに引き寄せられるようにある部屋のドアに寄り添い、小声でサボンに呼びかけをしました。やたら無鉄砲にドアを次々と開けて行きましたが、やはリサボンは居ませんでした。
「おい、サボーン。『かくれんぼ』なんか終わりにしてさー出てこーい」
潜んでいた黒い影が静かにイヌペンの背後を奪い、今にも食らいつきそうな牙をイヌペンに向けていました。イヌペンがサボンに再び呼びかけをしようとしたとき、その牙は遂にイヌペンを襲撃しました。イヌペンは日頃のんびりな生活を送っているせいか危機を感じづらく、やっとこの時自分の身に危険が生じている事を脊椎で感じ取りました。イヌペンはとっさに後ろを振り返りました。そこには死んだ振りをした人間が倒れていました。
驚きに満ち溢れたイヌペンは恐怖に打ち負かされ、とりあえずこの場から退散することを決めました。イヌペンが玄関の外に行くと倒れていた人間は起き上がり、それを再三確認するとようやく胸を凝下ろしました。保護色で隠していたドアを大胆に開き、静かに部屋へと入りました。押し入れの中のフトンの毛布をバサッと取り捨てると、その中には麻縄でぐるぐる巻きにされたサボンがありました。おまけにガムテープで口を塞がれています。サボンは口がきけないなりに、人間に文句をぶつけました。
「もがもがっ、もーがもがぁっ、もがも、もがーもがもがーっ! (てめー卑怯だぞ。オレがアホっけ病にかかってるときに捕まえやがって! 今はもう治ったけど! 何が目的だーっ!)」
人間はどういうわけか、サボンの聞きとりづらい言葉をすべて理解し、その答えを馬鹿にしたような口調で言いました。
「何が目的かって……そりゃあ、君を乗っ取るため。ワカル?」
サボンはさっぱり意味がつかめなかったようで、首を傾げました。人間はまるで自分の自慢話をするかのように、語り始めました。
「その為にサボンスーツを作ったり、君の生活を調べたり、声まねの練習をしたり……」
人聞は「おっと」と目を半開きにさせて言い、本題に戻りました。
「何のためかって? それは単なる自己満足さ。最近ヒマでさー」
サボンはがっくりしました。自分をこんなめにさせた理由が、こんなにも安直で突飛なことだとは思いもよらなかったからです。
その頃イヌペンは、またサボンの家の中に入って、彼を探すためにキョロキョロと見回していました。しかし、イヌペンは疲れてしまってそのまま眠ってしまいました。人間はトイレに行こうとして一階に下りてきたのですが、イヌペンがその近くで寝ていることに気付きました。同時に胸が暗い場所に落ちてゆくような、血の気の引き方が人間に起こりました。イヌペンはなんらかの殺気を感じて目を覚ましました。そして二人は目が合いました。人間は自分を守る最終手段として、また死んだ振りをしました。イヌペンは人間が急に倒れたので驚愕しましたが、すぐに気持ちが喜びに変わりました。
イヌペンは張りつめた表情で、片足を上げながら呟きました。
「ここのスイッチ踏むと……」
その足を地面につけた瞬間、人間の寝そべる場所から落とし穴があらわになり、そのまま人間を飲み込みました。イヌペンは暫くその穴の中を覗き込んでいましたが、飽きるとサボン捜しをやることに決めました。二階に到着すると、見覚えのない部屋があるのに気がつきました。イヌペンは直感でこの部屋に入ることを決断したのですが、イヌペンはこのドアを開ける前に歌をうたい始めました。サボンは聞き覚えのある歌声にはっとしました。
物騒にイヌペンがドアを足で蹴り開けると、無惨な姿になっているサボンが目に飛び込んできました。
「どーした?! 監禁されたんか?」
しかしイヌペンはそのままずっとこちらを見ているばかりで、サボンを助ける気配を感じ取れないのでサボンは苛立ちが込み上げてきました。
「ん?! なんとか言ってみろや。おーい!! おーい!!」
「このガムテープとれっつってんだよお……!!!」
「! とれってか? 何を?」
サボンは必死に口をアピールしました。
あーというなんか頼りない返事でしたが、イヌペンはしっかり理解していたようです。サボンの願いは通じ、ようやくトークが出来るようになりました。サボンはThank youと感謝の言葉を述べました。
「よし。出来た」
サボンは「何!?」となんかムカついてる時の口調で言いました。イヌペンはサボンの顔を見て歌が出来たようです。
題/サボン
サボンーサボンー とげボンボン
怪しげ あやしげ黒いおっさんにー
拉致されて〜
おくちの回りに ガムテープの痕ー
おもしろいーおもしろいー
イヌペンヒーロー
サボンおっちょこちょいのとげボンボン
サボンはこの歌を聞いてすぐに真偽を問いました。イヌペンはいかにも本当そうな顔で「うそ」と言いました。サボンは手鏡を要求しました。鏡餅が近くにあったので、イヌペンはこれをサボンに渡しました。
「それは鏡餅だ! くそー!!」
イヌペンと取っちめようとサボンは動こうとしましたが、サボンは麻縄を解いてもらっていなかったので、何回も転んでしまいました。
「やっぱ、おっちょこちょい!!」
こうして一日はあっというまに過ぎていってしまいました。
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