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第三話/歪みの中の真実




 ある朝、アルファは突然目覚めた。ゆっくりと腰をあげて周りを見渡すと、そこは白い空間に包まれた部屋だった。窓の外には南国を思わせる青いビーチが広がっていた。外をみた後後ろを振り返った。すると、程よく日に焼けた爽やかな青年が気配を感じさせずに立っていた。
「ああ。目がさめたんだね。ここに歯ブラシとコップ置いとくから。済んだら下に来て」
そう言って部屋を去っていった。
 清々しい朝にも関わらず、今にも嵐が起こりそうな気分で憂鬱感をアルファは覚えずに入られなかった。青年が貸してくれた歯磨きセットには目もくれず、速やかに一階へと降りようとした。ドアを開けるとロッジ風の家柄があった。
「なんだ……? こんな部屋を見るのは初めてだぞ」
アルファには研究所の中にこんな家があるのだと思い込んでしまった。ここは決して研究所の中ではない。いつの間にかアルファはこの場所にいたのだった。
「ねぇ、アンタ。何で私の第三の部屋を勝手に使ってるわけ?」
アルファが右に振り向くとβにそっくりの少女が彼を凝視していた。ついついアルファは見入ってしまった。我に帰って質問をした。
「貴様、βに似ている割には独占権の強い女だな。そんな性格だと殺されるぞ」
「……言ったね。あーとうとう言っちゃったね! 朝飯抜きね! わざわざあんたの分まで作ったのにもったいないことしちゃった!」
「なぜだ。オレが何か失言でもしたのか? 正直に貴様の性格を言っただけだ」
クールな態度をとるアルファをよそに彼女は今にも破裂しそうな頬を赤らめていた。
「女の子にそんなきついこと喋るなよ!」
あの青年が仲裁した。少女はその青年に寄り添って泣き崩れた。アルファは全然反省の色も無い。
「そうだ。まだ名前を言ってなかったね。僕はグリーンウィン。この彼女はスカイナラ。君は?」
「名乗る必要もないだろう」
そっけない口調で言い残し階段を降り始めた。階段を下りるアルファをグリーンウィンは見届けた。
 アルファは朝焼けに映えるテーブルをみつけた。そこにはロールパンと牛乳とハムエッグというモーニングセットが3つ並べてあった。興味を示さずさっさとここからでようと、一階にただ一つあるドアのドアノブを回すが、回している感覚が無い。
「……そうか。ならば力ずくでこじ開けるしかないな」
アルファが拳に力を込めた。すると、狼狽したグリーンウィンが急いで階段から降りアルファの腕をがっしりとつかんだ。
「だめだ! やっても無理なんだよ!」
「そんな証拠どこにある? 実際にやらなければ結果などわからないだろう」
グリーンウィンは顔をそむけた。
「…君が死ぬだけだぞ」
爽やかな奥にも真剣なまなざしが光った。
「今気がついたんだが、グリーンウィンか? 貴様ら馴れ馴れしくないか」
「そ、そんなことないさ。険悪なムードよりははるかにマシだろ? 僕はそういうのが嫌だからなるべく馴れ馴れしく努めているんだよ」
「そうよ」
スカイナラも添えで言った。アルファはますます怪しさを感じ取り、グリーンウィンの顔に顔を近づけ、つばを飲み込む音が聞こえた。
「…オレには嘘は通じない。わかるんだよ、嘘を判別する知識を得ているからな」
いつの間にかグリーンウィンの手はアルファの腕をかたく握り締めていた。その手から伝わる脈拍が嘘を判別するカギなのだ。
「くそおっ!」
グリーンウィンが一声すると急にあたりの景色が歪んだ。やはりここはあいつのフェイクだった。オレが寝ている間に勝手に外界に出やがって。
いや、今もそうだ。あいつは今ごろ楽しいひとときを過ごしているに違いない。やつを再度ここに封印するにはあのドアを開けるしかない。なにが危険だ。なにが無理だ。オレができないことなど無い。くさい芝居をやっている架空人間よりかははるかにオレの方が上手だ。
 音の余波かまだ歪み続ける空間のなかに歪まない一点を見つめてアルファは言った。
「もう会うことは無いだろう。もう一人のオレと永久に芝居をし続けるがいい」
このとき既に腕は外れていたが、またアルファの腕をグリーンウィンは掴んだ。
「まって。もう止めはしない、だけどこれだけは言っておくよ。今外界にいる君を先にここに返さない限り、君が外界に行くことはできない」
「ふん。むりやりここにつれてくればいい」
「確率まず0%だね。じゃあ」
グリーンウィンとスカイナラは食卓へと戻っていった。一人残されたアルファは迷わずドアへと向かった。



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