イヌペン 第9話(小説版原作作成日:2000年頃)
原題
サボンの父の兄の妻の妹の子の従兄弟の甥にあたる人。パート1
サボンの父の兄の妻の妹の子の従兄弟の甥にあたる人。パート2
結構グルメなサボンの父の兄の妻の妹の子の従兄弟の甥にあたる人。
イヌペン笑う
サボン父、燃えつきる。
ばったりと、イヌペンとサボンは互いに道ばたで行き会いました。イヌペンは花を摘んだ帰りで、サボンはイヌペンの家へ行くところでした。
「おっ! イヌペン! ちょーどいい! ちょっと助けてくれや」
サボンは言いましたが、イヌペンはそのまま行っちゃおうとしました。
「おめーと関わると、とんでもねーこと起きっから、やだよーん」
「そう言わずにっ!」
サボンはイヌペンに暑苦しく飛びつきました。
「わーった。だから、くっつくな」
イヌペンは、サボンに抱きつかれるのがイヤであるようなニュアンスで言いました。サボンは顔を引きつらせながらも「そ。わかってくれた……」と言いました。
「で……何よ!」
イヌペンはサボンを睨みまくって聴きました。サボンは、恐々言いました。
「あ、あのさ……オレの親戚が明日オレん家に来るのよ……」
「ふつーじゃん」
イヌペンは親戚が来るだけで何を助けるのかと思いました。しかしサボンは続けました。深刻な表情をして。
「そいつ、めっちゃデンジャーで、ミステリアスな野郎なんだ!」
「…………」
イヌペンは何故か逆立ちでサボンの話を聞いていました。サボンは真面目に聞いていなさそうなイヌペンを見て「おい」と言いました。イヌペンは、「気にすんな。話を続けて」と言いました。そして訊きました。
「ねえ。その親戚って男なの? 女なの?」
「あっ……いや、うん……男だ。……と思う。でさぁ、イヌペンがちょっとそいつにやって欲しいことがあるんだけど……いい?」
イヌペンは逆立ちしたまま言いました。
「おう。いーぞ。でも」
イヌペンは条件を出しました。
「おめーの父ちゃん一日貸してくれんならね……」
「オヤジをっ?」
サボンはまたもや顔を引きつらせましたが、すぐさま父のところへ行きました。
「オヤジーっ!」
サボンは何とも可愛らしい、憎めない声と顔で父を呼びました。父は何故かパンパンに張った風呂敷を担いで、コソコソしていました。サボンに見つかると、震えた声で言いました。
「な、なんだい? サボンよ……」
「いーから、ちっと来いや」
そう言うと、サボンは父をおんぶして、強引に連れ出そうとしました。父は叫びました。
「コラッ! 私は今から用事があるんだっ! もーっ!」
「いーから」
なんとかしてサボンは父を風呂敷に包み込んで、イヌペンの前に持ってきました。するとイヌペンは気分をよくしました。
「よーし……その件のった!」
イヌペンとサボンは、詳しい内容を打ち合わせる為にイヌペンの家へ行きました。イヌペンは飾ってある植物の手入れをしながら、サボンに「で?」と訊ねました。サボンは言いました。
「おまえの得意な歌で、そいつの記憶を取り戻してやって欲しいんだ!」
「……何でオレの歌じゃないとダメなの?」
「そ、それは……」
サボンは口ごもりました。しかしイヌペンはぽーっとしながら言いました。
「そーか。オレの歌はそんなに上手いのかっ!」
「……」
サボンは馬鹿っぽく、口をあんぐり開けました。そしてしばらく間を置いてから言いました。
「とにかく『おもいっきり』歌えば良いの」
イヌペンは「そ!」と、やる気満々で言いました。そしてイヌペンはそいつがどんな奴なのか訊きました。すると、サボンは何故かそいつの写真を持っていて、それをイヌペンに見せました。写真を見たイヌペンは、サボンに背を向けて思いました。
(悪人顔だーっ! サボンと同じくっ!)
サボンも思いました。
(? なんであっち向いたんだろ……)
13秒後、イヌペンは決心した表情で言いました。
「よし。サボン、今日おめーん家に泊まるわ」
それを聞くと、サボンは心配した顔で訊きました。
「かまわねーけど、おまえの親はいいの?」
するとイヌペンはその大切な事を忘れていたっぽく「あっ……」と言いました。続けて言います。
「でも一日だけだから、いーっしょ!」
ピーコが居るので平気だと思ったのでしょう。その後、イヌペンは意味深な怖い顔で「もしかしたらよ……おメェ死ぬかもしんないからな……!」と言いました。そしてイヌペンは愛用の枕を持って「よし。行くぞっ!」と、てくてく歩き出しました。サボンはあきれて「枕は持ってくんか……」と言いました。こうして二人はサボンの家へと行くのでした。ところで、サボン父はどうなっているのかというと……袋詰めのまま道ばたに放っとかれたままでした。
サボンの家に着くと、イヌペンは急に威張り出しました。まずは、夕飯をサボンに作らせました。「早く作れや。飯」とイヌペンが言うと、気の良いサボンは「はいはい、今作ってるよ」と、怒る事もなく言うとおりに料理しています。作られた夕飯を食べ終わったイヌペンは、しばらくして次の注文をしました。
「サボーン、ふとん敷いといてね」
「あ゛ー」
サボンは少し嫌々しながらも承諾しました。しかしその後もイヌペンは、次々と注文を出しました。「風呂沸かしといてー」とか「TVゲームさせて」とか「醤油こぼしちったから拭いといてー」とか「お茶いれてー」とか……。これにはさすがにサボンも我慢の限度を越えてしまい。近所迷惑にもほどがあるくらいの声を出してしまいました。
「いい加減にしろ!」
イヌペンはびっくりしました。別に悪気があったわけではない様子のイヌペン。そんなイヌペンにサボンは問いただしました。
「おまえ、いったい何様のつもりだよ!」
「王子様のつもりかな」
イヌペンはちょっぴりふざけた様子で言いました。それがさらにサボンの感情を逆なでし、サボンはイヌペンに回し蹴りをしました。頭にたんこぶができたイヌペンは泣きべそをかいて言いました。
「だってさー、おめーを守ってやるのにさー」
「だからって注文が多すぎっ!」
サボンがそう言いおえたときでした。ガチャッと玄関のドアが開いた音がしました。「まさかっ……」とサボンが言い、イヌペンも息をのんで部屋のドアを見つめました。
バタン。
ドアを開いた主はヒゲっ面のサボテン、そう、サボン父がいました。ドアが開かれてから20秒くらい空気が止まっていました。しーんと。緊張したままの二人に父は言いました。
「君たちー、私を置いていってヒドイじゃないか。んもう!」
二人は緊張した顔から、ずーんと気の抜けた顔に崩れました。すると父は不思議がって、どうしたと訊きました。サボンが重い口を開きました。
「……ホラ。おやぢが、明日親戚のアイツが来るって言ったじゃん。そいつだと思ってさ……」
「ああ、なんだ。でも『明日』って言ったろ? アイツは時間には、すっごーくキッチリしてっから平気さ」
(何が平気なんだよ……)と二人は思いつつ、三人は就寝しました。
――夜中。サボンは何か気配を感じ、目を覚ましました。目の前にはでかいずうたいをした親戚が居ました。そのときの時間はちょうど午前零時。つまり、ピッタリ翌日になったときでした。親戚が時間厳守だったのは本当でした。サボンはびっくりしまくって、眼球を飛び出させました。サボンは急いで隣に眠っているイヌペンを揺すり起こしました。イヌペンは「うおっ」と言って起きました。そして目の前のでっかい奴を見ると、一瞬硬直しました。が、次にその隣で寝ている父に対して、サボンと一緒に叩いたり蹴ったり踏んづけたりして暴行を加えて起こしました。父は「んっ」と言って起きました。父もイヌペンと同じように、奴の姿を見るや否や硬直しました。そのとき親戚、名前はバーボンですが、そのバーボンがつぶやきました。
「サボちゃん……」
それを聞いたイヌペンは震えた声で「に……げ……にげよ……う」と言いました。次の瞬間、バーボンは大口を開けて三人に向って襲いかかりました。イヌペンとサボンは特急で逃げ出しました。「喰われる! ああああああ!」と叫びながら。しかし、何とも勇敢なサボン父は、バーボンに向ってキッと顔を引き締めて言いました。
「君。こんな夜中に何をしたいんだっ!」
するとどうでしょう。バーボンは窮屈そうに窓から出て行きました。サボン父は、ただ訊いただけなのになと、不思議に思いました。
その頃イヌペンとサボンは、外でダッシュでめちゃくちゃ走っていました。逃げ疲れると、二人は立ち止まりました。
「ここまで、来れば、ふつはー来れない、だろ」
サボンは息を切らして言いました。サボンは薄目でイヌペンを見ると、イヌペンは驚いた表情で飛び上がっていました。「ん? イヌペン、どしたの?」とサボンは訊きました。イウンペンは今にもウ○チをもぐしちゃいそうな格好で、「あれ……」といって指をさしました。サボンは「あっ、これね……」と、それが何なのか分っているような口調で言い、指差すほうを見ました。そこにはなんと、バーボンの姿があったのです。バーボンは、早く気付けってと思っていました。サボンはよくそれを確かめると、「あ」と絶句しました。もう手遅れでした。バーボンは、サボンを一口で飲み込んでしまいました。バーボンは思わず言いました。
「ん! 美味っ」
そして、気絶しているイヌペンも飲み込もうとしました。そのとき、イヌペンの体に一本の黒いひもが巻きついて、バーボンに飲み込まれるのを阻止しました。
「だから! そんなことはヤメなさいっ!」
サボン父の声がしました。この黒いひもは、サボン父のヒゲだったのです。バーボンは突然吐血しました。ニヤリと微笑みながら。サボン父は「血は吐かなくてもいいのでは……?」と首をひねると、バーボンは答えました。
「コレ……僕の血ジャナインダヨネ……」
それを聞いたサボン父は形相を一変させ、ヒゲをバーボンにバシッとぶつけました。
「私も息子のところへ行かせろ」
父は状況を察知したらしいのでした。息子が喰われたことを。バーボンは快諾しました。サボン父を丸呑みすると、「んー……。苦ったらしい味だな……」と文句を言いました。その時、気付いたイヌペンも、「オレも」と言いバーボンに飲み込んでもらいました。イヌペンの味は「うめっ!」と、バーボンは高く評価しました。
バーボンのからだの中。父はヒゲで息子を見事キャッチしました。そこへ、イヌペンは食道を滑り台っぽく滑ってきました。
「たのすぃー!」
イヌペンはこども心で楽しみました。足元の方に黒いヒモがあるのを見つけると、好奇心でそれをぶちっと足で引きちぎっちゃいました。それが命綱だった父は、「NOooooooooooo!!」と叫びながら落下していきました。サボンは落ちていく途中で、バーボンの喉の毛にひっかかって止まりました。イヌペンはサボンを見つけると「サボン?」と優しく呼びかけました。しかしサボンは「はーん」という、気の抜けた顔をしていたので「サボン!」と怒鳴りかけました。サボンは目覚めました。
「イヌペン……こ、ここは?」
「奴の喉毛」
サボンは喉毛なんて聞いたこともなかったので、一瞬呆気をとられましたがすぐに冷静を取り戻しました。
「じゃあ、喉毛をつたって登っていけば出れっかな」
ためしに登ってみると、意外と行けそうでした。本格的に登り始めたとき、イヌペンはぼそぼそ言いました。
「サボン父は下に落ちていった気がするけど……いいのかな」
するとサボンはいきなり自ら落下していきました。イヌペンは親子愛っていいねと思いつつ、一人で登り始めました。サボテン親子は放っておいて自分だけ助かろうとしていました。のどちんこが見えはじめたときに、バーボンが咳をしました。その弾みでイヌペンは外へと吐き出されました。イヌペンが出てくるとは夢にも思わなかったので、「おまえ……」とバーボンは独り言を言ってしまいました。イヌペンはフッと鼻で笑いました。
「何がおかしい……」
バーボンが訊くと、イヌペンは「クックックッ」と普通に笑い、「ハッハッハッ」とあざ笑いました。バーボンは遂にキレました。
「何がおかしいんだおまえっ!」
するとイヌペンは「どあーっはっはっはっ! あはっ、あひっ」と大笑いして転げ回りました。バーボンは「何だおまえ!」とDJスクラッチのごとく同じ言葉を繰り返しました。ふと後ろへ振り返ると、早くも大便となって出ていたサボン親子がコロリンとありました。バーボンは理解しました。
「これを見て笑ってたんだなっ……」
イヌペンは「いや……」と否定して、にやけながら言いました。
「君の顔」
バーボンは脳天に隕石が衝突したような衝撃をおぼえました。その後、イヌペンとバーボンは口論を開始しました。三十分ほどしてバーボンは「あんたの言いたいことは分かったよ」と、イヌペンの笑った理由についての口論をしぶしぶ止めました。しかしその後、バーボンは重大発言をしました。
「おれの本当の目的はサボンたちじゃあなく、おまえなんだよ! ……おまえの兄はおれのねぐらを壊したんだ!」
「ハラペン兄ちゃんが……?」
「あぁそうだ! あいつはおまえに負けず劣らずの自己中心だな。おれのねぐらは細かい木の枝でできていた。ある日、家路に着いたときあいつがオレの家の枝を盗んでいたんだ。問いただしてやったよ。そしたらあいつなんていったと思う? 枝は『木』のものだ、おまえのものじゃない、ってな。そりゃそうだなって思って、何も言い返せなかったんだ……」
バーボンは歯を食いしばって続けました。
「家なしのオレは、はらいせにあいつより弱いだろうオマエを食いにきた!」
言い終わるとすぐに、バーボンはイヌペンを襲いました。イヌペンは初めの一撃を難なく避けることが出来ましたが、次の一撃はタイミングを逃してしまい、食べられそうになりました。しかし良いところでバーボンは何かにつまづいてしまい、転んでしまいました。
「何だ! オレのディナーを邪魔するやつぁー!」
バーボンは狂ったように叫びました。バーボンは足元を見ると、あのうんこまみれの親子が目に入りました。サボンは父を肩車していました。父は言いました。
「私たち親子のコンビネーションで吹き出た汗により、おまえはつツルッて滑ったのだ。そして私たちはその発汗作用によって、この不潔さを洗い流して一石二鳥だ!」
バーボンは、父があまりにも早口だったので上手く聞き取れませんでした。
「ちぃっ! 死に損ないがっ!」
と忌々しげに言いました。
「……しかし、よく消化されないでいれたものだな」
と、また独り言をいいました。その隙に、サボンはイヌペンに逃げるようにと、口で合図を送りました。イヌペンは合図の意味を考えました。「んー分ったゾ!」と言うと、イヌペンはころっと引っくり返ってブフーッと息を吐き出しました。サボンは(本当にわかってんのか?)という表情をしました。イヌペンは全ての息を噴出し、飛翔しました。そのころバーボンはサボン父と世間話に華を咲かせていました。
「おいヒゲ親父、おめーは何の仕事してんだ? ……へー新聞配達ね」
「そうだ。いいだろ。……おっ。そうだった……忘れてた」
父は深刻な顔をして思い出しました。仕事の新聞配達の時間がとっくの昔に過ぎていることを。
「ということは……?」
バーボンは訊きました。
「自動的にクビ」
サボン父の、行き場を失った強がりの気持ちが発火しました。そばに居たサボンとバーボンも巻き添えをくらって燃え上がりました。実はサボン親子の汗は脂に似た成分で、燃焼が良いコンディションなのでした。飛んでいたイヌペンはセーフでした。
こうして炭化した三人……イヌペンはサボンを守るとか言いながら、全然役に立っちゃいませんでした。挙句の果てに三人を見捨てて、さっさと帰ってしまいました。矛盾点が多い世の中です。伏線も回収する気もおきません。
カテゴリーへ戻る___イヌペン第8話___イヌペン第10話